2019年4月4日 褥瘡対策委員会
今回は“除圧・体圧分散”に焦点を当て、実際の方法をお伝えしたいと思います。
除圧は圧を取り除くこと、体圧分散は体重によって身体にかかる圧を身体全体に分散することをいいます。
床に横になっている所を想像してみて下さい。
仰向けのまま長時間いると、頭の後ろや背骨、お尻、踵(かかと)が痛くなってくると思います。それは、その部分に体重がかかり圧を受けているからです。
長時間同じ部位に圧を受け続けると、皮膚がダメージを受け、褥瘡に繋がってしまいます。普段私達は、寝返りをしたり、姿勢を変えたりすることで褥瘡を防いでいますが、思うように身体を動かすことができない場合や変形がある場合は褥瘡発生のリスクが高くなります。
褥瘡は主に骨の突出している部分に多く発生します。骨の出ている部分が圧を受け続けることで、その部分の血流が阻害され、皮膚が弱くなってしまうからです。
参照:日本褥瘡学会(http://www.jspu.org/jpn/patient/about.html)
では次に、除圧と体圧分散の方法を紹介したいと思います。
まず、1つは単純に体位交換の頻度を増やすということです。
重要なことは“長時間”同じ部位で体重を受けないということです。長時間同じ部位で体重を受け続けると、血行不良だけでなく、発汗などの影響でさらに褥瘡ができやすくなってしまいます。
毎回必ず身体を大きく動かす必要はありません。少し頭の位置を変える、足の位置を変える…といったことでも除圧はできています。ポイントは“こまめに”体位変換を行なうことです。
2つめはポジショニングです。
身近にある“タオル”で簡単に行うことができます。変形のある方は、身体と床の接触している部分は思っているよりも少なく、その唯一接触している身体の一部分で体重を受けていることが多くあります。
タオルをロール状に巻き、床と接触していない部分に入れ、体重を受ける面を増やすことで、体圧分散ができます。
難しい場合は、両体側にロールを入れるだけでも体圧分散は可能なので是非試してみてください。
また、他にもエアークッションや様々な体圧分散マットが種々販売されていますので、そちらもインターネット等で確認してみて下さい。
以上、除圧、体圧分散についてのお話でした。
2017年8月1日 褥瘡対策委員会
今回は「褥瘡(床ずれ)と栄養」についてのお話しです。
褥瘡(床ずれ)の直接的な原因は、圧迫、摩擦、ズレ等ですが、褥瘡(床ずれ)発生時には低栄養となっていることが比較的多く、その場合は治りにくいと言われています。褥瘡(床ずれ)予防にはたん白質やビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂ることが大切です。
*たん白質
皮下組織のコラーゲン生成や線維芽細胞の増殖など創傷治癒には不可欠な栄養素です。
不足しやすい栄養素でもあるため、肉や魚、卵などをバランスよく摂るように心がけましょう。
*ミネラル
カルシウム・鉄・亜鉛…これらのミネラルはコラーゲン生成に必要で、創傷治癒に不可欠です。特に亜鉛は免疫能や味覚にも関係し、たん白質合成にも関係します。亜鉛が多く含まれている食品は牛肉やチーズ、ココアなどです。
*ビタミン
・ビタミンA…皮膚粘膜を健康に保つのに必要です。食材では鶏レバーやうなぎ、緑黄色野菜に多く含まれます。
・ビタミンC…コラーゲンの生成や強度の増強に必要なビタミンで、キウイ、ブロッコリー、赤ピーマンなどに多く含まれます。
ビタミンCを多く含む食材
なお、「完熟」した赤や黄ピーマンは「未熟果」の緑ピーマンより栄養価は高くなります。(緑ピーマンのビタミンCは50g中38mg)
*水分
水分も褥瘡(床ずれ)予防に重要な要素です。
水分不足による脱水は皮膚の乾燥や褥瘡の原因となるため、こまめな水分補給を心がけましょう。
以上が褥瘡(床ずれ)の栄養管理に関するポイントです。ただし持病等がある方は食事摂取に関して医師にご相談下さい。
2017年5月15日 褥瘡対策委員会
3回目からは褥瘡(床ずれ)予防についてお伝えしています。
前回の続きになります。ポジショニングや車椅子座位時に姿勢が崩れないように、クッションや枕を上手に利用する様にしましょう。
ベッドのギャッチアップ時や車椅子に座っている際に姿勢が崩れていくと皮膚や皮膚の深いところに負担がかかり傷の原因となってしまいます。
ベッドギャッチアップ時には足→頭元の順に挙げるようにして足元側への擦(ず)れを予防しましょう。
また、ギャッチアップ後には「背抜き」をしてください。「背抜き」の方法は簡単です!
背中と背もたれの間、足とベッドマットの間など、接地面に手を差し込むだけです。
身体の緊張が高いときや不随意運動が強いときには、皮膚が床だけでなく枕で耳介が擦れてしまう事も考えられます。
クッションやバスタオル(ロール状に丸めて腰や肩などの下に入れます。
長時間の使用は避けてくださいね)を使用して耳が圧迫により潰されないようにしましょう。
また、ドーナツ状に穴の開いた枕を耳の部分に当てて耳に力がかからない様にする方法もあります。
衣服や寝具のしわ(シーツはピンと張らずにふんわりと)にも注意が必要ですね。
4回にわたり、褥瘡予防についてお伝えしてきました。
ご家庭でお試しいただければと考えています。
ご不明な点があればいつでもセンターまで問い合わせてくださいね。
第1回目・2回目ではスキンケアについてお伝えしました。
3・4回目では、褥瘡(床ずれ)予防についてお伝えします。
以前は褥瘡予防の方法として2時間ごとの体位変換が有効であると言われていました。
しかし、近年では体位変換によっておきる「擦(ず)れ」も褥瘡の原因であるとされているため推奨はされていません。
体位変換やポジショニングの崩れ、車椅子座位中におこる姿勢の崩れなどによって皮膚に対して「圧迫」や「擦れ」または「圧迫しながら擦(ず)れる」といった現象がおこります。
それにより表皮だけではなく、皮膚の深いところに傷ができてしまいます。皮膚の深いところに傷ができると治癒にも時間がかかってしまい痛みも長引いてしまいます。体位変換の際には擦らない様に注意しましょう。
当センターではスライディングシートやグローブを活用しています。
ご家庭では清潔なビニール手袋や大きめのポリ袋でも代用できますよ。
是非試してみてください。
株式会社モリトー ホームページより
前回は、皮膚の「バリア機能」を保つ為には保湿をすることが大切である事について、お伝えしました。
今回は、具体的な保湿の方法についてお伝えしたいと思います。
まず、「保湿」と聞くと思い浮かぶのは軟膏やクリームを使用して、潤いを与えることだと思います。
しかし、それよりも重要なのは、皮膚の油分を落としすぎないこと、皮膚を擦らないこと(皮膚への刺激を減らす事)なのです。
入浴時には石鹸(ボディーソープも含む)やシャンプーの量は極力少なくし、ワキや臀部・陰部周囲などの皮膚が重なっている部分だけに使用するようにしましょう。
石鹸使用の際には泡立てて擦らず優しく洗ってください。
入浴後の湿気がまだ残っているうちに軟膏やクリームによる保湿を行うことが効果的です。
皮膚のバリア機能を守ることにより、乾燥を防ぐだけでなく皮膚トラブルも起こりにくくなります。是非実践してくださいね。
初めまして、褥瘡対策委員会です。
褥瘡対策委員会は、皮膚科Dr・病棟担当医師をはじめとして、リハビリ科、栄養課、各病棟の看護師で構成されています。
委員会では、褥瘡に対するケアについてだけではなく、褥瘡予防やそれにつながるスキンケアについても話し合われています。
今年の3月に地域の方々や法人内の他施設職員にもスキンケアについて理解を深めてもらおうと、公開講座が開催されました。
皮膚科Drからのスキンケアについての講座があり、褥瘡対策委員会からは褥瘡をつくりにくい介助についてお伝えしました。
これから4回にわたり、公開講座の内容を紹介していきたいと思います。
是非ご覧ください。
皮膚は、真皮および皮下組織でできています。
表皮には「バリア機能」という大切な役割があり、皮下組織に対して細菌や環境からの不必要なものの侵入を防いでくれています。
この役割をしっかりと果たしてもらう為には保湿が何よりも重要です。次回はスキンケアにつてお伝えします。